社員から「体調が悪い」「精神的に辛い」と相談されたとき、すぐに産業医につなぐべきか迷うことはありませんか?
もちろん、産業医の活用は重要です。しかしその前に、人事としてできることがあるのをご存じでしょうか。
今回は、メンタル不調の初期段階において、人事が現場でできる「初期対応マニュアル」をご紹介します。

そもそも産業医の役割とは?
産業医は、労働安全衛生法に基づき、社員の健康管理や職場環境の改善などを担う専門職です。
ただし、産業医はあくまで「医療的判断」や「就業可否の意見書作成」などが主な役割であり、日常的なフォローや職場内の変化に気づくのは、むしろ人事や上司の役割です。
早期段階での人事の対応が、休職や離職を未然に防ぐ大きな鍵となります。
人事が行うべき初期対応ステップ
Step1:変化に気づき、情報を集める
上司や同僚から「最近あの人元気がない」といった声が上がったら要注意。
表情・勤務態度・業務パフォーマンスなどの変化を観察し、小さな異変も記録しておくことが大切です。
Step2:本人に安心できる環境で声をかける
相談室やカフェなど、リラックスできる場所で声をかけましょう。
伝え方の例:
「最近、少しお疲れの様子に見えますが、体調はいかがですか?」
詰問口調ではなく、相手の立場を尊重した言い回しがポイントです。
Step3:話を“聴く”ことに徹する
アドバイスよりも、「まず聴く」ことが重要です。
話の途中で口を挟まず、「それは大変でしたね」など共感の言葉を挟むことで、相手の安心感が生まれます。
Step4:状況を整理し、必要に応じて環境調整
ヒアリング内容をもとに、ストレス要因(業務内容、人間関係、体調など)を整理しましょう。
必要に応じて、以下のような配慮を検討します。
- 業務量の一時的な軽減
- 在宅勤務や時差出勤の提案
- チーム編成の見直し
初期対応でやってはいけないこと
以下の対応は、社員の不信感や症状の悪化を招く恐れがあります。
- 「気のせいじゃない?」と軽く済ませる
- 「自分も昔は大変だった」と経験を押し付ける
- 勝手に判断して様子見にする
相手の声を「真剣に受け止める」姿勢が何より大切です。
産業医に相談すべきタイミングとは?
初期対応を行ったうえで、以下のような状況であれば産業医の関与が適切です。
- 本人が「精神的に辛い」とはっきり訴えている
- 欠勤や業務パフォーマンスに明確な影響が出ている
- 人事としての判断に限界を感じている
紹介時は、これまでの経緯や観察内容を整理したメモを添えるとスムーズです。
社内で整備しておきたいサポート体制
社員が安心して相談できるよう、以下のような体制づくりも重要です。
- 相談ルートや対応フローの明文化
- 定期的な1on1ミーティングの実施
- メンタルヘルス研修の導入(管理職向けなど)
- ストレスチェック結果の活用とフォロー体制
まとめ:人事が“最初に関わる”ことが、最大の予防策になる
メンタル不調は、誰にでも起こり得ます。
産業医につなぐ前に、人事が寄り添い、耳を傾け、必要な配慮を行うことで、社員を守るだけでなく、組織全体の健全性を高めることにつながります。
「人事こそが職場の心のインフラ」になる――そんな時代が今、求められています。
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