秋にも花粉症
花粉症は春になると多くの人がつらい時期を迎えると一般的に思われていますが、実は秋にも花粉に悩む人が多いのが現実です。
花粉症は、現代社会において広く広まっており、くしゃみ、鼻水、目のかゆみ、喉の痛みなどの症状が極めて辛く、これらの症状は日常生活の質(QOL)や仕事にも大きな悪影響を及ぼすことが確認されています。
今回は、花粉症に関する理解を深め、職場での対策に焦点を当てて考察してみたいと思います!
1.花粉症って?
2.花粉症と仕事への影響
3.職場における花粉症対策
1.花粉症って?
新たな日本の国民病と言われる花粉症について、最新の情報を提供したいと思います。
まず、花粉症とは何か?花粉症は花粉によって引き起こされるアレルギー疾患で、アレルギー性鼻炎(くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状)や目のかゆみ、頻繁な涙、結膜炎などが一般的です。また、花粉症は特に重症な場合、喘息やアトピーの症状と併発することがあります。
このアレルギー反応によって、頭がぼーっとしたり、集中力が低下したりするなど、日常生活に大きな影響を及ぼし、仕事の効率を低下させることがあります。実際、政府も花粉症を「社会問題」と認識しており、その重要性を強調しています。
日本における花粉症の有病率は2019年時点で40%以上に上るとの調査データも存在し、年々増加傾向にあります。主要な花粉症の原因はスギ花粉ですが、ブタクサ花粉やイネ科の花粉に苦しむ人々も多くいます。年齢別の有病率を見ると、10代から50代までの範囲で45%と言われています。
花粉症への対策として、政府も積極的な取り組みを行っており、スギの木を減少させる計画などが進行中です。しかし、即効性のある対策が難しい現状もあります。今後、花粉症に対する包括的な対策を進める予定ですが、一朝一夕に効果が現れるものではないでしょう。
2.花粉症と仕事への影響
実は、花粉症による経済損失が約3,800億円にのぼるといったニュースもあるように、花粉症は仕事に対しても大きな影響を及ぼします。
エステーでは20歳~59歳の花粉症患者且つ有職者の男女603名に対してインターネットによるアンケート調査(2019年12月)を実施しており、「花粉対策と仕事における生産性への影響に関する実態調査」をまとめています。それによると、調査では花粉症で仕事に影響が出た人は約7割もいると判明し、花粉症が仕事のパフォーマンス低下に大きく関わっていることがわかりました。その他にも花粉が原因で出社をためらった人は6割以上といった回答が得られています。
「花粉症によって仕事に影響が出たことがある」と回答した人に「勤務時間のうち、どのくらいの時間、仕事に影響しますか?」と質問をしたところ、24.3%の人が5時間以上と回答しました。また、「花粉シーズンのうち、おおよそどのくらいの日数に影響がありますか?」と質問をしたところ、57%が1か月以上影響があると回答しました。特にパフォーマンスを下げる症状は「鼻水」と「目のかゆみ」であり、約9割が集中力が低下するとの回答が得られました。
このようにデータで見てみると、花粉症による仕事への影響はかなり大きいようです。また従業員の6割が職場へ花粉症対策を希望していますが、実際に対策を行う職場はわずか1割程度であり、花粉症による生産性低下解決のため、企業の働き方改革が求められる結果が示されました。
3.職場における花粉症対策
個人の対策としては「いかにアレルギー物質である花粉を避けるか」が予防の基本になっています。花粉が多い日や時間帯の外出を避けたり、花粉が付きづらい服装を選んだり、生活習慣を整えることが重要ですが、花粉症が社会問題となっている現在、花粉症の人だけがどうにかしないといけない問題ではなくなっているのです、
特に社会人になると、仕事の都合で個人が自己対策を行うのが難しいことがしばしばあります。先に述べたように、花粉症が仕事に与える影響に関する調査からも分かる通り、企業も従業員が快適に働けるようにするための工夫をする必要があります。さらに、国もこの問題に対する企業側の取り組みを奨励しているのが現在の状況です。
職場の花粉症対策ポリシーの策定
職場で花粉症に対する方針を策定し、従業員に周知することが非常に重要です。例えば、花粉の飛散が多い日はリモートワークを推奨したり、高飛散時刻に外出を控えるなどの柔軟な働き方を提案することが考えられます。ただし、職場によっては出勤や外出が不可欠な場合もあるでしょう。その際には、屋内と屋外の両方に適した対策を講じる必要があります。従業員の声を聴きながら、労働衛生を管理する担当者や経営者が具体的な対策を検討し、実行することを明確化する必要があります。
室内の空気品質の向上
エアフィルターや空気清浄機の導入により、職場内の花粉の浮遊を減少させることができます。また、こまめに掃除の時間を取り入れる、定期的なカーテンなどの洗濯も効果的です。
仕事環境の調整
重症の花粉症を抱える従業員に対しては、快適に仕事を遂行できるよう、本人の希望を聞き取った上で必要に応じ個別の対策を講じることが不可欠です。
業務の調整: 例えば、花粉の症状が最もひどい時間帯に業務を割り振るのを避け、従業員の体調に合わせた業務時間の調整を行うことや、花粉の多い日には特別な業務を避け、軽作業やオフィス業務にシフトさせるなどが考えられます。
個別の作業環境の提供: 花粉症の従業員には、個別の作業環境やデスク位置の変更等を提供し、花粉の影響を最小限に抑えます。これには、個別の作業室や清浄なエアフィルターの設置、窓の閉め切り、空気清浄機の設置などが含まれます。
教育と意識向上
職場で花粉症についての教育を行うことで、同僚や上司が花粉症を持つ従業員の症状やニーズについて理解する助けとなります。職場における花粉症対策は、従業員みんなの「思いやり」が必要になる場合がありますので、会社全体で取り組む意識づけにも効果的です。
衛生対策
手洗いや洗顔、マスクの着用など、感染症対策を実施することで花粉症の症状を軽減できます。特に花粉症用のメガネやマスクはそれでないものに比べて、より花粉防御の効果を発揮します。
残念ですが、さまざまな花粉症関連グッズの中では、花粉症の症状を改善する十分なデ ータが得られておらず、民間療法も有効と認められたものはないと言われているのが実際です。
花粉症対策については、仕事と病気の両立支援の考えにおいても同じことが言えますが、実際のところ、花粉症の従業員のために工夫をしている会社は従業員全体に対しても働きやすい職場になるということが言えます。花粉症の人のために行った労働環境整備等の対策が、その他の従業員の人にとっても快適な職場環境になるということです。またそれに応じて、良い職場環境は従業員の仕事に対するモチベーションの向上につながり、良い循環をもたらしてくれます。
どれも必要とされる対策ですが、まずは1つでも取り組んでみることが大切です。従業員の健康のため、会社の居心地の良い環境づくりのため、社会問題の解決のために、第一歩を踏み出してみることをおすすめします。