ストレスチェックで自分を知る
現代は職場環境のみならず、プライベートにおいても変化が目まぐるしく、高いプレッシャーとストレスにさらされることが少なくありません。これによりメンタルヘルスの問題がますます注目されています。メンタルヘルスの問題を克服し、職場での幸福感を向上させるためには、自分自身のストレス状況を正しく把握し、必要な対策を講じることが不可欠です。ストレスチェックの活用に関しては以前のブログでも書きましたが、今回は「ストレスチェック」を通じて、自分を知るタイミングとその重要性について探求し、メンタルヘルス対策の必要性をお伝えします。
1、ストレスチェックからわかること
2、自分のストレス状況は自分では分かりづらい
3、高ストレス者はなぜ面談を受けないのか
4、高ストレス者に対して会社ができること
1、ストレスチェックからわかること
現代社会において、私たちは日常的にさまざまなストレス要因と直面しています。仕事、家庭、健康、人間関係など、ストレスはあらゆる面で私たちに影響を及ぼします。そのため、メンタルヘルス対策の重要性はますます高まっています。しかし、自分のストレス状況を正確に把握し、適切な対策を講じることは簡単なことではありません。
ストレスチェックは、自己評価を基に、自分自身のストレスレベルを把握するためのツールです。各尺度の点数が低い方がストレスが強いと判断されるので、レーダーチャートは中心に近づくほど状態が悪いということになります。
(厚生労働省:こころの耳より)
ストレスの原因因子
ストレスの原因因子の項目では、自身のストレスの主な原因やトリガーを特定します。自分がどの状況や課題に対してストレスを感じているのかを理解することができます。これは、仕事の負担(量と質)、仕事の適性度、コントロール度、家庭や周囲の環境、健康上の問題、人間関係に関するものなど、多岐にわたります。発生源が明確な場合は、それを取り除く、もしくはその状況を緩和するための措置を講じる必要があります。特に人間関係によるものや、自分の働きがいについては短期間ですぐには解決しづらい問題です。自分でこんなトロールできることか否か、誰かに相談すべき出来事か考えてみましょう。自分でコントロールが難しい場合は早めの対策と長期的な目線での予防対応が必要となってきます。
ストレスによる心身反応
実際に感じている心身の状況について振り返る機会となります。特に自分自身のストレスの程度を客観的に評価できるため、問題の深刻さを理解しやすくなります。高ストレス者の6割~8割に何かしらの身体的症状があるという報告もあり、高ストレスになればなるほど心の状態や身体愁訴は何らかの形で表に出現してきます。自分のストレスがどの程度の深刻さであるのかを知ることは、対策を講じる第一歩です。チェックの結果が要注意ゾーンに差し掛かっているにもかかわらず、結果についてそれほど深刻ではないと思ったという言葉は、高ストレス状態を放置して悪化した人のフレーズです。メンタルヘルス対策は早めの対応がカギとなります。
ストレス反応への影響因子
特定の要因が高ストレス状態を引き起こす可能性がある場合、それらの要因を特定し、対策を講じることができます。ただ、同じようにストレス要因を抱えた人でも、周囲のサポートがあるかどうかでその状況をストレスと感じるかどうかが変わってきます。上司や同僚、家族や友人とどれくらい気軽に話ができるか、頼れるかなど、十分なコミュニケーションが取れていますか?コミュニケーションは質も量も大切ですが、質にこだわる前にまず量を増やしてみることも対策の一つです。
2、自分のストレス状況は自分では分かりづらい
自分自身のストレス状況を正確に評価することは、意外にも難しい課題です。ストレスはしばしば我々を無意識のうちに支配し、疲れや不調、イライラなどの症状が積み重なることがあります。そのため、ストレスの程度や原因に気づくことは難しい場合があります。
多くの人々は、忙しい生活や日常の騒々しさに巻き込まれ、自分が高ストレス状態にあることに気づかないことがよくあります。また、ストレスの兆候が体調不良や感情の不安定さとして現れることも、ストレスの本質を見逃す原因です。
しかし、ストレスチェックは客観的なツールとして、この問題を解決する手助けとなります。自己評価を通じて、日常生活で気付かなかったストレス要因を明らかにし、適切な対策を講じるきっかけとなるのです。
3、高ストレス者はなぜ面談を受けないのか
全国労働衛生団体連合会が行う調査(平成29年)で159万人分のチェック結果を分析したところ、高ストレスと判定された人は13.4%。これは身近な職場においても10人に1人か2人は高ストレス者がいる計算です。しかし実際にストレスチェックで高ストレスと判定された人でも「何もしなかった」人が6割もいることが調査で明らかになっています。
自己認識の不足
多くの高ストレス者は、自分が高ストレス状態にあることに気付いていないことがあります。したがって、メンタルヘルスの問題を認識し、対策を講じる動機が欠如している可能性があります。高ストレスの状態に慣れてしまい、それが日常の一部となっていることから、それほど重要なことではないと思い対策が疎かになってしまっている可能性があります。
ストレスのタブー視
一部の文化や職場では、ストレスやメンタルヘルスの問題について話すことがタブーとされていることがあります。高ストレス=負け犬だと思われてしまうかもしれないといった、メンタルヘルスについての間違った認識により、高ストレス者が周囲の人々と問題を共有しにくくなります。自分の問題や課題について他人に伝えることに抵抗を感じることが一因となります。
仕事へのプレッシャー
高ストレス状態にある人々は、仕事のプレッシャーや忙しさに追われて、メンタルヘルスに関する面談や対策を受ける時間を持てないことがあります。仕事へのコミットメントが高いため、自分自身のメンタルヘルスについて十分な注意を払えないのです。仕事へのコミットメントが高いことはもちろん良いことですが、長期的な視点で考えれば自身のヘルスケアを行うことは自分の未来への投資という目線を持つこともできます。
4、高ストレス者に対して会社ができること
従業員のために、会社ができることは多くあります。メンタルヘルスを重視し、従業員の幸福感とパフォーマンスを向上させるために、以下のアプローチを検討しましょう。
サポート体制の整備
メンタルヘルスの問題に対処するための社内窓口や専門家へのアクセスを具体的に示すことが重要です。高ストレスと判定されてもどうしたら良いかがわからない人が大半です。文書や口頭での伝達などを通して相談に対するハードルを下げることで適切なサポートを受けることができ、高ストレス者が問題に向き合いやすくなります。
ストレス軽減策の推進
職場でのストレス軽減策として環境面を整えることも従業員のストレスを軽減するために重要なことです。事業主には従業員の心身の健康を守る安全配慮義務が課されていますが、メンタルヘルス不調の未然防止策として職場環境を継続的に評価し改善するといった取り組みが推奨されています。特に衛生的で安全な職場環境、柔軟性のある労働環境の提供、教育研修やストレス管理プログラムの実施などが考えられます。
ストレスを溜めすぎる危険性を知らせる
メンタルヘルスの問題をタブーにせず、オープンな議論を奨励し、従業員がストレスや不調について自由に話す場を提供します。オープンなコミュニケーション環境を構築することで、高ストレス者が自分の状況を共有しやすくなります。
メンタルヘルスの問題は、個人や組織全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。ストレスチェックを通じて、自分のストレス状況を正確に評価し適切な対策を講じることは、より健康で幸福な職場環境を築くための重要な一歩です。不調の未然防止を含めたサポートが充実しメンタルヘルスに対する意識が高まることで、より健全な労働環境が実現できるでしょう。